屋久島・離島の沢

屋久島 宮之浦川

テクニカルな登攀やゴルジュ帯の高巻き、竜王の滝や漏斗の滝などの見所も有り。

まさに屋久島最難の名に相応しい1本!

屋久島 宮之浦川 遡行記録

2019/4/25-27 2泊3日 晴→雨/雨→晴/曇→晴

遡行グレード:5級

メンバー:シュカ、他1名

GW前最後の好天期間を利用し、いよいよ本命の宮之浦川へ。

車なので下山コースに悩んだが、アプローチと下山の両方を考慮した結果、白谷雲水峡に車を置くことにした。
白谷雲水峡からバスに乗り、牛床公園で下車。
そこから宮之浦林道に向けて歩く。


湯川橋に到着。ここから宮之浦林道に入る。
今日は雨予報であったが、予報に反して下界は晴れ。しかもかなり暑い。


林道に入るとすぐにゲートが。ここから総長10kmの長い林道歩きが始まるのだが…
なんと林道を半分くらい歩いた所で、林野庁の方が偶然通りがかり車に乗せてくれることに!本当にありがとうございました。


あっという間に入渓地点の潜水橋に到着。
名前の由来は増水時に橋が水で沈んでしまうことから。
また、岩が流れて行けるようにガードレールを付けてないらしい。と林野庁の方が教えてくれた。


当初は潜水橋付近に泊まる予定だったが、まだ日没までに時間があるので出来るだけ距離を稼ぐことにする。


早速、宮之浦川に入渓。ナメを歩く。


しばらく歩くとナベカケ谷出合。
ここの左岸が良い感じのテン場適地になっていたので、本日はここで行動終了。
屋久島は焚火が出来ないので夜はかなり寒い思いをした。
しかも雨まで降り始め、明日以降どうなることやらと初日から憂鬱になった…。


翌朝。昨晩はそれなりに雨が降ったが、水量に影響は無いようだった。
小雨で気分は良くないが、今日から3日間は晴れ予報なので好天を信じて先に進む。


前半は屋久島特有の巨岩帯。巻いては沢に降りてを繰り返す。


変わらない渓相に飽きてきた頃、前方に巨大なスラブが見えてきた。


ここからマンベー淵の始まり。


巨岩帯で埋め尽くされたゴルジュを進むと第一巨岩が現れる。


巨岩下に岩の隙間が見えるので、覗きに行くと…。


人間が通れる隙間があった。

さらにゴルジュ内部へと入っていく。


第二巨岩が見えてきた。奥にはさらに巨大な岩が見える。


第二巨岩はラバーソールのフリクションを活かして登る。


第二巨岩を越えるとすぐに第三巨岩。ここの通過が最初の核心だ。
沢幅いっぱいの巨岩!写真では中々伝わらないが、実物はかなり大きい。


第三巨岩はセオリー通り、右岸の逆相スラブから登ることにする。


下から見上げる。残置ロープがぶら下がっていた。


早速ロープを出して登攀スタート!パートナーがリード。
出だしで2ポイントの人工登攀、上部はフリーで登る。
全体的に残置多めだが、どれも腐っていて使えるのは下部のみ。


これで巨岩帯は終了。白糸の滝が右岸から静かに水流を落としている。
この辺りから晴れてきてテンションアップ!


少し進むとすぐにF10 10m滝。巨岩が積み木のように重なっている。


F10は左岸の草付きから巻く。


屋久島の草付きは割と丈夫で、上越の貧弱な草付きに比べればだいぶ安心感があった。
小さめに巻こうとしたが、スラブに阻まれたのでさらに上を目指す。


上の方に登っていくと快適に歩ける場所が出てくる。
ここから落ち口に向けてトラバース。


最後の数mがかなり嫌らしいスラブだったので、斜め懸垂で越える。


高巻き終了。これで第二の核心終了。
F10の落ち口付近に虹が見えた。


F10を越えると奥に竜王の滝が見えてきた。


圧倒的な存在感…。恐ろしくも美しく、畏敬の念を抱かずにはいられない滝だ。
上段は下から見えないが3段110mの巨大な滝になっている。


右岸から竜王の滝の巻きに入る。本日最後の核心だ。


出だしは急峻なルンゼを登っていく。


少し登ると巨大なCSが前方に見える。


そこから左側を少し登ると右岸チムニーの取り付き。
これは事前情報が無いと気付けない。


ここもパートナーがリード。空身でチムニー内部へと入っていき、1ポイント人工で20mくらい登って上の灌木でビレイ。
フォローで荷上げしながらユマーリングで登ったが、かなり大変だった…。


2ピッチ目もパートナーがリード。
前半は木登り、後半はCSをくぐって登攀終了。


私も何とか登りきり2ピッチ目終了。
荷揚げしつつのフォローで時間がかかってしまったが、無事に核心を越えることができた!


この付近は良い感じのテラスになっており、竜王の滝が綺麗に見える。


終了点から急斜面を登り、尾根に出る。


そこからさらに登り、降りられそうな場所を探して行く。


イマイチ下の様子が分からないので、適当な場所から懸垂。


ようやく沢床に復帰。竜王の滝の巻きから5時間もかかった。


ゴーロを歩くと沢は右に屈曲し、漏斗の滝が登場。不思議な形状の滝だ。


漏斗の滝は左の沢を登り、尾根に乗って巻く。


沢床に復帰するのに少し彷徨ったが、懸垂無しで沢に降りられた。
奥にF19 10m滝が見える。ここからしばらく連瀑帯となる。


F19は右岸のルンゼを小さく巻く。
次の滝も登れそうには見えず、さらに巻きを続けるが、低く巻き過ぎたようで岩壁に行く手を阻まれてしまった…
やむを得ず、誰も登っていないであろう急峻なルンゼを登り、岩壁の上に出た。
やはり屋久島の沢は大きめに巻くを徹底した方が良さそうだ。

時間は18時を回り、闇が迫る中、藪の中でテン場を探す羽目に…
何とか2人寝られそうなテラスを見つけて行動終了。


3日目。4時に起床し、朝食を食べて日の出と同時に行動開始。
今日は登山道に抜けてもう1泊する予定。 冬型の気圧配置になり、かなり気温が低い。

テン場から高巻きを続けていると写真左の急峻な沢に阻まれたので、沢に懸垂で下降。

数時間ぶりに沢に降り立つ。 すぐにF22の20m滝が出てくる。右岸を小さく巻こうとするが、何だか微妙な感じ。

迷った末、左の急峻な枝沢を登り藪に突入。 後で他の記録を見たら、右岸を小さく巻くが正解だったようだ。

高巻きを終えてようやく沢に復帰。 思いのほかゴルジュの高巻きに苦しめられた。

いよいよ後半戦だがまだまだ巨岩が現れる。
5-10mクラスの滝が出てくるが、この辺りから巻きが簡単になってくる。

奥に7m滝が見える。左岸から巻く。

10m滝も左岸から。

巨岩帯を縫うように登っていく。 一見登れなさそうでも、近くに寄ると上手い具合にルートが繋がっている。

F28に到着。写真左の岩の隙間を登る。

 
左岸に相当な高さのスラブが見える。

F29を越えた頃には沢が優し気な雰囲気になる。3-4m程の滝が続く。

少し歩くと上部ゴルジュの入口となる。 突破出来ないのでひたすら右岸巻き。

高巻きを始めようと沢を歩いていると、猿の群れに遭遇。 取り巻きの小さい猿が騒いでいるとボス猿が登場。こちらを鋭い眼光で睨みつけてくる。 そそくさと通り過ぎる。

上部ゴルジュの高巻きは沢床が見えなくなるくらい大きめに巻く。 途中、ゴルジュ出口にかかる15m滝らしき滝が見えたので、降りられそうな場所を探して行く。

高巻き開始から約2時間で沢に復帰。 沢は完全に落ち着き、癒しの渓相になる。

緊張から解放され、快適に登っていく。

どんどん高度を稼いでいくと…。

最後の二俣に到着。30m滝がかかる左俣に進む。

30m滝上からの景色。街と海が一望できる。


かなり源頭部まで来たが、谷の切れ込みはまだまだ深い。

意外と長い源頭部に飽き飽きしていると最後の二俣。 登山道に近そうな左俣に入るが、これが失敗だった。

猛烈なシャクナゲと格闘。遅々として進まない。

数十分ほどの猛烈なヤブ漕ぎの後、ようやく登山道に飛び出した。 やっと終わった!

記念に宮之浦岳をピークハントしに行く。

20分ほどで山頂に到着。 15時と遅めの時間だが、山頂はGW初日ということもあり、多くの登山者で賑わっていた。

今日は4月で一番天気が良いのではないか?というくらいの大快晴だった。

下山中。左から翁岳と宮之浦岳。 今日は新高塚小屋でもう1泊の予定だったのだが…。

小屋に着いてみるとGWで小屋は満員。周りもテントだらけ…。
早々に泊まるのを諦め、本日中に白谷雲水峡に戻ることに決定。

下山8時間、総行動時間17時間という怒涛の一日を終え、日付が変わる前に駐車場に帰還。

しかし流石に歩きすぎたのか、翌朝立ち上がろうとした瞬間に足裏・踵に鋭い痛みが走る…
完全に痛めてしまったようなので、しばらく休むことにする。
パートナーは普通に筋肉痛だけで何ともないらしく、つくづく丈夫な身体が羨ましい。

宮之浦川は屋久島最難と言われるだけあり、技術的にも体力的にもハードな沢だった。
しかし、竜王の滝をはじめとした数々の美しい滝、迫力ある巨岩帯や大岩壁など、屋久島の自然の素晴らしさを存分に体感することができた。
もう2度と行きたくはないが、本当に行ってよかったと思う。

そんなこんなで沢trip屋久島編、終了!
屋久島の沢は大きく、本州の沢はとは違う独特な渓相、水の綺麗さに驚いた。
また来ることがあれば、今回行けなかったところも是非訪れてみたい。

コースタイム

1日目
潜水橋16:00―ナベカケ谷出合17:40

2日目
起床5:30―出発6:30―マンベー淵8:00―F10 9:30―竜王の滝10:30―右岸チムニー取付き11:00―漏斗の滝16:00―テン場18:30

3日目 起床4:00―出発6:00―上部ゴルジュ10:30―二俣13:20―登山道15:00―宮之浦岳15:30―白谷雲水峡23:00

装備

ラバーソール靴、50mロープ、カム、アブミ、ハーケン