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沢登りでは虫に要注意!渓流で出合う虫と対策を紹介!ブユ・アブ・蜂・ヒル等

こんにちは!シュカです。

今回は沢登りで出会う厄介な虫たちと、私たちがしている虫対策についてお伝えします。特に渓流沿いでは、普通の登山ではあまり見かけない虫も出ますし、登山道に比べるとその数も多いです。

沢登りを快適にするために、しっかりと対策をしていきましょう。

虫の画像があります。苦手な人は閲覧注意!

沢登りで出会う厄介な虫

まずは、私たちが沢登りをしている時に出会った、嫌な虫たちの紹介です。笑

発生する場所や時期、刺す虫に関しては症状などを解説していきます。刺されたことがあれば、体験談や感想も書いていきたいと思います。

ブユ(ブヨ、ブト)

渓流沿いに生息する、黒くて小さな羽虫です。水が綺麗でないと生きていけないので、ブユがいる沢は水質が清浄だという目安にもなるそうです。発生時期は春~秋で、日中に活動します。

ブユに刺された直後は、少し血が出て赤い点になっているだけで、特に痛みもありません。刺されたことに気が付かない場合も多いです。しかし、翌日になると、強烈な痒みと腫れ、ズキズキとした痛みといった症状が出ます。刺されたところが水ぶくれになったり、1週間以上痒みが引かない場合もあります。

ちなみに、正確には蚊のように「刺す」のではなく、皮膚を「かみ切って」血を吸う虫です。しっかりとした生地の服の上から吸血してくることは無いと思われますが、経験上、薄手のメッシュ生地の上からは刺されたことがあるため、油断は禁物です。

体験談・所感

沢では今のところ一番嫌いな虫です。見かける頻度も高いですし、基本的に沢シーズン中ずっといるので避けようがなく、刺されたときのダメージも大きいからです。

私はアレルギー反応が強く出るタイプなので、刺されると酷く腫れます。更に、1週間ほどは蚊に刺された時の何倍もの痒みに苛まれます。搔かないようにしていても、治ってから長い間痕が残るので、心へのダメージも大きいです…

刺されても別に死にはしないですが、憂鬱になる。そんな虫です。

アブ

沢登りで特に厄介なのは、白黒の縞模様の小さめのアブ、イヨシロオビアブです。「オロロ」や「メジロアブ」とも呼ばれ、雪国の沢でよく見かけます。

大量にまとわりつくメジロアブ

夏に活発に活動し、お盆をピークに大量発生します。大群でしつこくまとわりついてくる為、非常にうっとおしい虫です。涼しくなると居なくなるので、イヨシロオビアブが多い渓流には、盛夏を避けて入渓すると良いでしょう。

ハチそっくりのアカウシアブ。photoACより引用

他にも、一般的に皆さんが想像するような、大型のアブももちろんいます。茶色っぽい色のウシアブや、黒と黄の縞模様のアカウシアブが代表的です。特にアカウシアブは一見ハチに見えるので、見かけるとビックリします。どちらも大群ではなく、単体~数匹で現れます。

沢の中というよりも、高巻き中や沢の詰めで見ることが多い印象です。一度ターゲットにされると、どこまでもしつこく追いかけてくる為、厄介な虫です。

アブに刺されるとチクっとした痛みを感じるので、刺されたことがすぐに分かります。特に、大型のアブに刺されると結構痛いです。しばらくすると、痒みや腫れといった症状が出ます。

アブもブユと同様に、皮膚をかみ切って吸血します。ブユと比べると体が大きいせいなのか、薄手のTシャツ1枚程度だと服の上から吸血されることもあります。

ハチと違って振り払っても問題なく、止まってもすぐには刺してこないので、くっつかれたことに気が付いたらすぐにはたき落としましょう。

体験談・所感

刺されたときの体感は、蚊よりは痒くて腫れるけど、ブユよりは全然マシという感じです。

数日で治ることが多いので、あまり気になりません。とはいえ、何十カ所も刺されたらどうなるか分からないので、メジロアブが大量発生中の沢に入る気にはなりませんが…。

以前、メジロアブのことをあまり良く知らなかった頃、真夏に下田・川内の沢に行こうとしたことがあります。当初、夏は虫が多いとは聞いていましたが、まぁ大したことは無いのだろうと思っていました。

しかし、いざ入渓点近くの駐車場に到着した時、車の周りを尋常ではない数のアブに囲まれ閉口…。しばらく待ってみたものの、一向に数が減る気配もなく、そのまま車から一歩も出ずに帰路につくということがありました。

アブの大量発生中は、いくら虫対策をしていても、沢を楽しむどころではないと個人的には思います。(ちなみにケーシは虫に刺されても何ともないようで、盛夏の中杉川で何百か所と刺されても問題なかったようです。羨ましい体質ですね。)

ヒル

ピンボケしてますが吸血中のヒル

ヒルにも色々といますが、血を吸うのは茶色いナメクジか尺取虫のような、ヤマビルというヒルです。湿気の多い場所を好み、沢登りでもよく見かけます。暖かい時期になると出てきて、特に雨の日やその翌日に活発に活動します。

ヒルに血を吸われると、痛みは感じませんが、しばらく血が止まらなくなります。ヒルが吸血する時に注入する「ヒルジン」という物質に、麻酔と血を固まらせない作用があるようです。血が止まらないので少し不安になりますが、出血はやがて収まりますし、傷口も一般的には数日で治りますので、あまり心配する必要はありません

ヒルも刺すのではなく、歯で皮膚を傷つけて吸血します。経験上、薄いメッシュ生地の上からでも吸血されたことは無いので、服の上から噛まれることは無いと思います。

基本的に足元から這い上がり、肌が露出している所を探して取りつきます。くっつかれた場合、すぐにはがしましょう。ライターや虫よけスプレーではがすのがオススメですが、無い場合は引っ張ってはがしても特に問題ないそうです。

ちなみに、昔からよく「ヒルは木の上から落ちてくる」と言われていましたが、最近はそうではなく、「全て地面から這い上がってきている」ということが分かったそうです。ですので、足元の対策をしっかりとする必要があります。

体験談・所感

今回紹介している虫の中では、一番マシな虫だと思います。痛みや腫れなどの症状が出ないので、まぁかわいいものだなと個人的には思います。

見た目がグロテスクで、特に吸血の真っ最中に見つけるとショッキングですが…。

血を吸ったヒルを見つけたら、生息域を広げてしまわないためにも、しっかりトドメを刺しておくことをお忘れなく。

ハチ

ハチは沢登りで見かける頻度はそこまで高くない印象です。とはいえ、滅多に無いことですが、登山中にハチに刺されて死亡する事例もあるため、見かけたら注意が必要です。

一年中活動していますが、真夏~秋にかけて特に活発になります。種類によって巣を作る場所は様々なので、ハチを見かけたら周囲をよく確認し、出入りしている様子がある場所には近寄らないようにしましょう。

ハチに刺されると、激しい痛みや腫れといった症状が出ます。一度にたくさん刺されたり、過去にハチに刺されてアレルギーが出たことがある人が刺されると、命に関わるアナフィラキシーショックを起こすリスクが高くなります。

ハチは吸血するためではなく、巣を守るために刺してきます。なので、基本的には巣に近寄らない、ハチを刺激しないことが大切です。

偵察のために追いかけてくる場合もあるようですが、慌てて振り払ってしまったりすると、ハチはそれを攻撃とみなして襲ってきます。巣が近いと群れで向かってくる場合もあるようです。ハチを見かけても焦らず、静かにその場を離れるのが良いでしょう。

体験談・所感

過去に一度だけ、ハチが原因で撤退したことがあります。とある沢で滝の高巻き中に、友人がハチに刺されてしまったのです。

先行パーティが滝を高巻いているのを待っている最中、周囲に数匹ハチが飛んでいることに気づいていましたが、その時は特に気にしていませんでした。先行パーティが抜けたようなので、私たちも高巻きに入ると、明らかにハチの数が増えているような…。

それでも高巻きを続けていると、ついに友人が目の横をハチに刺されてしまいました。どうやら、ハチの巣が近くにあったようで、立て続けに人間が通ったことにより刺激してしまったようです。

ともかく、ハチ刺されはヤバいということで、そこで撤退を決めました。特にアレルギー反応のようなものは出ていないようでしたが、しばらくすると片目が開かないくらい腫れてきてしまったため、遡行を打ち切って良かったと思います。

帰宅後、友人は念のため病院に行き、刺されたところは数日で良くなったそうです。

幸い、私自身はハチに刺されたことはまだありません。ただ、他の虫に刺されたときに強めの症状が出るので、ハチに刺されたら1回目でもヤバそうではあります…。今後も十分に気を付けたいと思います。

マダニ

山で特に要注意とされる虫のひとつがマダニです。主に春から秋にかけて活動します。水辺というよりも、草むらなどに生息しているようです。

沢登りでは高巻きや藪漕ぎの際に食いつかれるリスクがありそうです。また、一般的にマダニが危険だと言われているのは、マダニが様々な感染症を媒介するからです。

マダニは麻酔の作用がある物質を注入して吸血するので、痛みを感じることはほぼ無く、刺されたことに気づかない場合が多いです。

気づかず放っておくと、マダニは体から離れないように、口からセメント状の物質を出して固めてしまいます。この状態で無理やり引っ張ると、頭や口が残ってしまう可能性が高く危険です。

また、無理に引き抜こうとして潰してしまったりすると、マダニの体液が体に入ってきてしまう可能性もあります。食いついたマダニが病原体を持っていた場合、感染症にかかるリスクが高くなります。

ですので、食いつかれて数日経ってしまった場合は、病院で診てもらうのが無難でしょう。

マダニは服の上から食いつくことはないので、肌をなるべく出さないように気を付けましょう。虫よけスプレーも有効です。

体験談・所感

実は最近まで見かけたことも無かったのですが、紀伊半島の沢に行ったときに初めて遭遇しました。友人のウェットスーツにくっついていただけで、幸い被害はありませんでした。

それ以来「ホントにいるんだ」と実感し、山から下りてきた後は、入念にマダニチェックをするようになりました。また、刺された直後なら簡単に取れると聞いたので、マダニ取りシートを常に持ち歩くようになりました。

シマ模様のヤブ蚊。photoACより引用

山中に出る蚊といえば、白黒の縞模様のヒトスジシマカ(いわゆるヤブ蚊)や、黒ゴマのような見た目のヌカカが挙げられます。(正確にはヌカカは蚊ではなくブユに近いようですが、面倒なのでこちらで紹介します。)

活動時期は初春から晩秋まで。早朝や夕方の涼しい時間帯に活発になるので、主にビバーク中に遭遇することが多いです。

ヤブ蚊に刺されると、すぐに痒みを伴って赤く腫れます。ヤブ蚊はイエ蚊と比べると、多少強めに症状が出るようです。しかし、掻いたりしなければ、数時間程で痒みも収まり、数日で痕も無くなります。

ヌカカ。見た目もブユっぽいですね。wikipediaより引用

一方ヌカカは、刺された直後は痒みや腫れは少ないのですが、翌日に猛烈に痒くなったり、水ぶくれが出来たりします。ブユに刺された時と同様、1週間以上痒みが引かない場合も多いです。また、集団で行動する習性があるため、一度に何十カ所も刺されてしまうケースもあります。

どちらも薄手の服1枚程度では防げず、服の上から刺してくるので要注意です。また、ヌカカは体が小さく、少しの服の隙間からでも侵入して刺してくるので、更に注意が必要です。どちらも虫よけスプレーが有効ですので、ぜひ活用しましょう。

体験談・所感

ヤブ蚊に関しては、焚き火をしていればあまり寄ってきませんし、刺されても大したことが無いのであまり気になりません。ただ、寝る時に耳元に寄ってこられると、うるさくて寝られないので嫌ですね。

また、私自身はヌカカに刺されたことは無いですが、友人が足をボコボコにされたのを見たことはあります。

沢登りの前泊で、駐車場でビバークしていた時、友人は夏で暑いからと言ってシュラフ等を使用しないで寝ていました。顔はネットでガードし、ウェアも虫忌避の効果があるもので揃えていたので万全かと思われましたが…靴下だけ普通の靴下でした。結果、朝になったら足を何十カ所も刺されてしまっていたということです。

刺されたらブヨと同じレベルの痒みが出るらしいので、遭遇してしまった場合、集団で襲ってくるヌカカの方が厄介かもしれません。

沢登りにおける虫対策

次に、私たちが沢登りでしている虫対策を紹介します。色々と試行錯誤はしていますが、どうしても100%防ぐことはできません。

ただし、虫刺されの被害をかなり減らすことは出来ているので、参考になればと思います。また、実際に刺されてしまった時にどうしているのかも紹介したいと思います。

行動中

肌を出さない

基本的にはなるべく肌の露出を減らす事で、虫に刺されないようにしています。

夏場で薄着でいたい時には、虫忌避ウェアを活用しています。アブやハチといった大型の虫に効果はありませんが、ブユや蚊には有効です。

アブが目につくような沢では、暑さを我慢して上下雨具を着込むしかありません。

また、ズボンの裾を沢靴の中に入れる、または渓流スパッツをはくことで、ヒルが足元から服の中に侵入することを防ぐことができます。

顔や首周りが気になる場合は、防虫ネットがオススメです。

ただし肌に触れていると、メッシュを貫通して刺してくるので、なるべく余裕を持たせてかぶりましょう。

私の場合はキャップをかぶり、上から虫忌避ウェアのフードをかぶり、更にその上から防虫ネットをかぶります。こうすると、防虫ネットと耳・首回りが直接触れる事が無く、顔の前にもある程度空間ができるため、ほぼ刺されることはありません。

虫よけスプレー

普通に薬局などで売っている虫よけスプレーを持っていっています。蚊やマダニといった小型の虫に有効です。

ディートが入っている割合が高いほど、より長い時間効果が持続します。ただし、汗や水ですぐに流れてしまうので、定期的に吹きかける必要があります。

ハッカ油

虫よけスプレーに加え、ハッカ油も持っていきます。虫よけスプレーと違い、アブにも有効です。

とはいえ、劇的に寄ってこなくなるわけではなく、多少減る程度なので、過度な期待は禁物です。個人的には、ブユにもハッカ油の方が効くような気がします。香りが飛んでしまうと効果がなくなるので、頻繁に吹きかける必要があります。

虫よけの他にも、さわやかな香りで気分転換したい時などに使っています。また、肌にはあまり良くないかもしれませんが、夏場などは原液をそのままスプレーすると、しばらくヒンヤリして気持ちいいです。

ヒルよけスプレー

ヒルの多い山域に行く際に持っていきます。

ヒルは基本的に陸にいるものなので、アプローチや下山時、遡行中は高巻きや藪漕ぎ前に使用しています。ヒルにくっつかれた時にも、スプレーをするとすぐに剥がれてくれるので便利です。

就寝時

とにかく肌を出さない

基本的には行動中と同じです。シュラフに入って寝る際にも、防虫ネットをかぶり、肌が露出しないようにしています。

虫が多い時には、シュラフカバーの口を完全に閉めて寝ることもあります。息苦しいですが、刺されるよりは良いと思って我慢しています。

刺されてしまったら

ポイズンリムーバー

ファーストエイドキットの定番的アイテムで、私も常に持ち歩いています。虫に刺された直後に、毒液を吸引するために使います。

私はよくブユや蚊に刺された後に使いますが、使わなかった場合と比べると症状が軽く、治りも早い気がします。刺されてしばらくしてから使ってもあまり効果が感じられなかったので、ポイズンリムーバーは刺された直後に使うのが良さそうです。

吸引した痕がしばらく残るので、顔などの皮膚が弱い部分に使うのは避けた方が良いかもしれません。

薬を塗る

ポイズンリムーバーの後に、痒みを抑えるための薬を塗ります。私が使っているのはベトネベートクリームSというステロイド薬です。(薬局に売ってます!)

一般的な虫刺されの薬では、ブユに刺されたときの痒みが我慢出来なかったので使い始めました。塗るとスッと痒みが消えるので、非常に重宝しています。

私の場合は特に何事もなく使用できていますが、副作用の話も耳にします。各自の肌、体質に合ったものを使用しましょう。

痒い時の最終手段(試すのは自己責任で…)

たまに、薬を塗っていても痒みが我慢できなくなる時があります。そのような場合は、刺された患部に自分がギリギリ我慢できる程度の熱いお湯をかけ続けると、痒みが引きます。

火傷の危険もありますので、全くおすすめはしません。

病院に行く

ハチに刺されてアレルギー反応が出た場合は、すぐに病院に行きましょう。(山中でアナフィラキシーを発症した場合は救助要請ということになります。)

マダニに刺されて抜けない場合も、感染症のリスクがあるので病院に行って抜いてもらうのが無難です。また、それ以外の虫さされでも、症状が酷くなるようなら素直に病院で診てもらいましょう。

おわりに

沢登りは大自然の中で行うものなので、虫とは切っても切れない関係にあります。

残念ながら、完璧に虫刺されを防ぐことは難しいので、上手く付き合っていくしかないですね。出来る限りの工夫はしつつ、なるべく快適に沢登りを楽しみたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました!