沢登り

【事故防止】沢登りで危険な目に遭わないために【リスクマネジメント】

こんにちは!サワグルイのケーシです。

今回のテーマは沢登りのリスクマネジメントについてです。

沢登りは自由度が高くとても楽しい遊びですが、
その反面、不確定要素が多く、登山のジャンル内でも1-2位を争うほど危険な遊びでもあります。

この記事では
沢登りに潜むリスクや実際に起こったヒヤリハット(事故一歩手前⁈の事例)、そして私たちが普段から危険な目に合わないために気を付けていることについてお話ししていきます。

これから沢登りを始める方、そして始めたばかりの方がこの記事を読んで、
少しでもリスクを減らして、安全に沢登りを楽しんでいただけたら幸いです。

沢登りに潜むリスク(危険性)

ここでは沢登りに潜むリスク10個とその内容について記載します。

  1. 増水
    増水した釜に飛び込んで上がれなくなったり、増水した沢を渡渉中に流されたりと増水による事故は沢登りの中で一番多い気がします。
    増水の早さや水量はその山域の地形や植生によって変わりますが、
    一般的に一枚岩で構成されたスラブやナメが多い沢は保水しないため、増水が早いのですが、その分減水は早いです。
    反対に落葉樹や常緑樹などの木がたくさん生えている一般的な沢は増水するのは遅いのですが、水が引くのも遅くなるため、前日までの雨の影響を大きく受けます。
    また麓は晴れていても上だけ降っていて増水するケースや上部の雪渓崩壊による急激な増水など、様々なケースがあります。
  2. 落石
    落石には自然落石と人為的な落石の2種類があります。
    自然落石は大雨の後などで地盤が緩んでいる時に起こりやすいのですが、実際に当たる確率はかなり少ないと思われます。
    一方で沢登りでは人為的な落石による怪我や事故が多く、滝を高巻く際や滝の登攀時には細心の注意が必要です。
  3. 転倒滑落
    不安定な足場やヌメリによる転倒、岩の剥離による滑落や高巻き時のスリップなど様々です。
    沢登りは場所によってエスケープが困難であったり、谷が深いと救助のヘリが近づきにくかったりするので、怪我をすることは致命的です。
  4. 支点の崩壊
    ビレイ支点や懸垂下降支点の崩壊などがありますが、特に懸垂支点の崩壊による事故は沢登りに限らず非常に多いです。
    沢登りでは立木を使って懸垂することが多く、支点の木が折れたり、根本から崩れたりすることがあるため、しっかりとした支点を見極める能力が必要です。
  5. 低体温症
    沢登りは他のジャンルと違って衣服が濡れるという特徴があり、低体温症のリスクが非常に高いアクティビティです。
    特に筋肉量の少ない女性や痩せ型の人に起こり易く、遡行中のレイヤリングには気を使う必要があります。
  6. 雪渓崩壊
    豪雪地帯では遅くまで雪渓が残ることが多く、沢登りでは一番厄介な存在です。
    内部を潜るか、雪渓の上に乗るか、雪渓を高巻くかの3択になります。
    その時の地形や雪渓の具合などで処理の判断をしますが、基本的にどれも危険なので、出来れば出会いたくないものです。
  7. 斜面の崩壊
    大雨の直後に起こり易く、当日は晴れているからと言って油断は出来ません。
    行く予定の山域近くで土砂災害警報が出ている場合などは特に注意が必要です。
  8. 道迷い
    近年のスマホGPS普及などから沢登りの道迷いについてはあまり聞かなくなりましたが、登山道の無い山域や人気の少ない山域に入る際は注意が必要です。
    しっかりとコンパスを使って地図を読む力を身に付けましょう。
  9. 釜の巻き込み
    夏の暑い日には天然のプールに飛び込みたいものですが、
    釜の中は複雑な渦を巻いていることが多く、一度入ると抜け出せなくなる場合があります。特に落差のある滝から流れの複雑な深い釜に飛び込んだり、増水時に釜に飛び込むのは自殺行為です。
  10. 獰猛な生物、吸血生物との遭遇
    クマ・イノシシや蜂、その他吸血生物など、沢登りはまさに猛獣・害虫の溜まり場です。
    活発になる季節、習性などを把握し出来るだけ対策を講じたいところです。

私たちが体験したヒヤリハット

ここでは私たちが実際に体験したヒヤリハットについて記載します。
下に挙げた以外にもちょこちょこやらかしていますが、とりあえず代表的なものだけ載せています。

CASE1 増水によるテン場水没(ケーシ、シュカ)

これは一番やってはいけないやつですね。
2人で平ヶ岳のワカゴイ沢という場所に1泊2日で行った時のことでした。
初日の夕方から朝まで雨予報だったので、出来るだけ上に泊まろうということで出発。
しかし上に行けば行くほどテン場になりそうな場所が無く、
明け方には止むから大丈夫だろうと仕方なく沢横の小さな河原で寝ました。

ところが夜中に沢の異常な音と体の冷たさに目が覚めると…何と沢が大増水&テン場が完全に水没。
慌てて仕度をして真っ暗な中、藪に逃げ込みヘッデン行動から2日目が始まるという大失態を犯しました。
もう少し起きるのが遅かったら…もう少し下流で泊まっていたら…と思うとかなり怖かったです。

幕営地の選定、集水面積の広い沢の増水時の状況をだいぶ甘く見ていました。
そもそも夜からかなりの雨が降ることが分かっていたのに突っ込んだのが間違いでした。

CASE2 斜面崩壊に巻き込まれる(ケーシ)

これは結構稀なケースだと思いますが、
奥秩父の滝川本谷に沢登りに行った際に土砂崩れに巻き込まれました。

沢の状況は当日は晴れでしたが、台風通過の直後に入渓したため、かなり増水気味。
大きな釜がある滝を左からへつっている時に事件が起きました。
何と自分の右斜め上から轟音と共に土砂崩れが発生。しかも軽自動車くらいの巨大な岩が2-3個落ちてきている。。
一瞬死んだと思いましたが、無我夢中で釜に飛び込んで逃げて腕の深い傷だけで済みました。

この時は沢登りを始めたばかりで、斜面崩壊なんて一切頭には無かったのですが、
大雨が降った後や数日雨が降り続いた場合は地盤が緩んでいることがあるので、気を付けなければならないなと痛感しました。

CASE3 懸垂下降中に残置のハーケンが抜ける(ケーシ)

これは南アルプスの栗代川に行った時のことですが、
核心のゴルジュを巻いて、残置を使って懸垂下降で沢床に降りていた際に
残置の1つが抜けてしまい、残りの今にも抜けそうなハーケン1つで懸垂下降をするハメになりました。
残り1本が抜けたら重大な事故に繋がっていたと思うと、後から怖くなってきました。

普段は入念に強度を確認しているのですが、この時はゴルジュでかなり消耗していたため、判断力が低下し、支点の強度確認を疎かにしていました。
残置を使った懸垂下降の際は必ず強度を確認&保険に新しいものを打ち足すなどの対策が必要と改めて感じました。

CASE4 飛び込んだら想定外に浅くて両足首骨折(ケーシ)

初心者を数名連れて奥秩父の東沢下部に行った時の事です。

当日は晴れていましたが、前日までの雨でかなり増水気味。
通常、水流沿いに突破出来る箇所も巻くか側壁を登攀するしかありませんでした。

そして終盤に差し掛かった頃、判断に迷うポイントに出くわします。
平水であれば水流沿いを簡単に突破出来る箇所が増水により通過不可。
そのまま側壁をトラバースするか、対岸に渡渉するかの2択しかありませんでした。(高巻きは不可能な地形)
側壁のトラバースは登れる人には安全なルートですが、今回は私以外が初心者ということもあり、落ちると下の激流に流されてしまうため、かなりリスキーと判断。
仕方なく対岸にジャンプして渡渉し、後続は流れの緩いところからロープで引っ張り上げることにしました。
そしていざ手前の強い水流を越えて、対岸の深そうな所を目掛けてジャンプ!(高さは2-3mくらい)
見事に成功~!と思ったら想像よりも水深が浅い!?そして両足首が変な方向に曲がったのを感じました。
後続全員を引っ張り上げた後に段々と足首に激痛が走り始め、沢靴を脱ぐのも困難なほど足首部分が腫れあがってきました。
とりあえずテーピングで両足を固定して激痛に耐え、全員をフォローしながら何とか登山道合流地点に到着。
この時点ではまだ歩けたので少し重めの捻挫だろうと思い、気合で痛みに耐えながら何とか自力下山で戻って来れました。
が、帰りの車内でアドレナリンが切れたのか…
今まで感じたことのない痛みと悪寒、そして吐き気に襲われ、自宅に着いた頃には歩けなくなっていました。
そしてそのまま病院に直行。両足首の骨をやっていることが分かり1ヶ月入院することに…。
もちろん休職となり、会社とシュカにはかなりの迷惑をかけてしまいました。

増水により安全なルート確保が困難だったこと
ジャンプで渡渉した場合のリスクを甘く見ていたこと
自分以外が全員初心者で後続をフォローする人がいなかったことなど
複数の要素が積み重なって起こった事故でした。

今回はたまたま登山道が脇を並走していたので自力で下山できましたが、
もっと山の奥深くで同様の事故が起こったと思うとゾッとします。
この事故を機により慎重に行動するようになったと思います。

CASE5 一緒に行った初心者が岩の隙間に落下(シュカ)

初心者(以下Aさん)を連れて釜川右俣に行った時の事です。
Aさんは泊まり沢が初めてだということで、ザックを重そうに一生懸命歩いていたのを覚えています。

二俣を過ぎてすぐの巨岩が重なったような滝で事件が発生。
泳ぎが苦手なAさんのために、私はロープを引いて滝に取り付き無事登りきり、
Aさんを引っ張り上げた後、「足場が安定したところまでそのまま歩いていって」と先に行かせました。

すると目の前から急にAさんが消えてしまったのです!

どうやら岩の隙間(私からすると何でもないような所でした)に落っこちたらしいと理解し、慌ててロープを握りました。
後続のもう一人の同行者も慌てて泳いでいって滝下から覗くと、そこには全身を水に打たれながら宙づりになったAさんの姿が・・・
どうにか息は出来る状態だったので、そのままロープでAさんを釜に下ろし、下からロープを引いて陸に上げました。
幸い怪我はありませんでしたが、ショックと軽い低体温症で震えるAさん。
とても遡行を続けられないので、そこで撤退としました。

私自身は釜川に行くのは2回目で、もう一人の同行者は結構登れる人だったので、二人でフォローすれば何とかなると思って行って、大失敗してしまいました。
Aさんにとっては初の泊まり沢で溺れかけるという、怖い思い出になってしまい、今でも申し訳なく思います。

やはり不慣れな人がいる場合は、その人に出来るだけ無理のないルート選定が必要だと実感した出来事です。

危険な目に合わないために気を付けていること

ここでは私たちが普段、沢で危険な目に合わないために気を付けていることを記載していきます。
避けようのないリスク(自然落石、土砂崩れ、獰猛な動物との遭遇など)以外は事前の下調べや行動中の対応で比較的コントロール出来ると思っています。

コンディションを見極める

沢に入る前は天候、水量、雪渓の有無を確認・予想するようにしています。
また代替案を1-2個設けて、よりコンディションの良い沢へ行けるようにしています。

<天候>
沢のコンディションを左右する重要なファクターです。
晴れの日や沢によっては小雨程度であれば決行することが多いです。
雨が一日中降り続いたり、台風や大雨の翌日は当日晴れていても中止にするか入渓を遅らせる場合があります。
沢の種類によって雨の日に行くこともありますが、リスクが普段より格段に上がる上、全然楽しめないので、最近はあまり行かなくなりました。

<水量>
沢登りは水量で難易度が大きく変化します。
特に泳ぎ主体の沢ではこの影響が顕著に表れ、普段何ともない所でも増水時は全く歯が立たないことが多いです。

ゴルジュが続く泳ぎ主体の沢は雨の日はもちろん中止。
台風通過後や前日に大雨が降った場合も中止にしています。
微妙な時は現地で水量を確認するのが一番良いのですが、事前に気象庁のサイトなどから累計雨量をチェックしてみるのも1つの手だと思います。

<雪渓の有無>
雪渓の有無や状態は遡行の成否を左右する重要なファクターです。
豪雪地帯(北海道・飯豊・朝日・越後)などは雪渓が消えないことが多く、どうしても雪渓と付き合っていかねばならないのですが、
如何せんいつ崩れるのか分からないロシアンルーレットなものなので、出来ることなら避けたいものです。
雪渓が無い季節や雪の少ない年に行くというのが一番安全安心な方法です。
過去の記録やその年の降雪量を参考に行く時期を見極めましょう。

パーティの力量を越えたところには入らない

お互いの力量を知っているパートナー同士なら、力量を見誤っての事故はあまり起こらないと思いますが、初心者を連れて行く場合は注意が必要です。
自分にとっては何ともないところで苦戦したり、予想外のところで落ちてしまうことが良くあります。
なので、自分の行けるグレードから1-2グレードダウンした沢を選ぶなど、初心者にあまり無理をさせないように気をつけましょう。

また、初めてパーティを組むときなど、一緒に行く人の力量が分からない場合も同様に、いきなり攻めた沢には行かないようにするのが無難です。

体調管理を万全に

風邪や怪我などで体の状態が万全でない時は無理に沢に入らないようにしています。
仕事の休みやパートナーとの関係で少し無理をしてでも行きたい!と思うこともありますが、体のパフォーマンスが万全でない以上、無理は禁物です。
少しでも体調に不安を感じたら、勇気を持って沢を中止にしましょう。

日々のトレーニングを欠かさずに

体力・登攀力は沢登りの必須要素です。沢に行かない日は出来るだけ有酸素運動をして、登攀力維持のためにクライミングジムに通っています。
体力は最低8時間以上歩ける力を登攀力はボルダーなら5級くらい、リードなら5.10台前半を安定して登れる力を身に付けておくと安心です。
体力と登攀力を上げることでスピーディーに行動できるようになり、より安全性が高まります。

下調べ・準備をしっかりする

目的の沢に入る前は、しっかり地形図を確認し、入渓地点や詰め上がる場所、テン場やエスケープルートをある程度頭に入れておきます。
地形図のコピーに水線を引くなど、事前に書き込みをしておくのも良いでしょう。
調べ過ぎると面白くないという理由で、時にはWEB上の記録を見なかったり、遡行図を持っていかなかったりすることもありますが、
特に慣れない内は事前にWEBや書籍などから色々と情報を得てから沢に入ると安心です。

下調べをしたうえで、目的の沢に必要な装備を準備していきます。
ここで装備の状態もしっかりチェックするのが理想ですが、私達は沢から帰って来て装備を洗うついでにすることが多いです。
例えばロープが痛んでいないか、カムが正常に動くか、ガス缶の残量が少なくないか等です。

最後に

最近は何事もWEB上で簡単に知識を得ることができますが、沢登りに関してはその場での状況判断や危機管理など、どうしても経験が無いと難しいところがあります。
なので事故やヒヤリハットの事例を知っておくことに加えて、やはり初めは講習会や山岳会等を利用し、見守ってくれる人がいる環境の中で、危険を察知する力や対応力を徐々に身につけていくことが大事だと思います。

我々も大小色々とやらかしていますが、この記事から得た教訓が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
今後もリスクをしっかりコントロールして安全な沢登りライフを楽しんでいきたいですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。